熊谷さとしのフィールドノート
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ヤギと漂流記

 植物学者に言わせると、ヤギは「悪魔の化身」と呼ばれているのだそうだ。
別にヤギが悪いのではない。
本来野生のヤギの分布は、小アジアからカフカス、南トルクメニスタン、 イラン、イラク、バルチスタン、インドなのだ。
 それなのに人間が世界中に連れだし、今や野生化した帰化動物としては 最も広く分布してしまった。
 しかも大陸ばかりではなく、地中海の島々、小笠原諸島、ガラパゴス諸 島、ハワイ諸島、フィージー、セントヘレナ、モーリシャスといった、無 数の小島でも見られる。

 この連中がなぜ悪魔の化身かといえば、目に付くモノを片っ端から食い 尽くし、緑豊かな島々をむき出しの岩とやせた泥土だけの広漠たる風景に 変えてしまったからだ。

 そういえば子供の頃に読んでいた「ロビンソンクルーソー漂流記」や 「宝島」にも、当たり前のように野生のヤギが登場していたのに何の疑問 も持たずに読んでいた。(もっともガキの頃は、アマゾン川はアフリカに ある。と信じていたくらいだから…)
 ロビンソンクルーソーは17世紀の人だから、すでにもうそのころから ヤギは野生化していたことになる。
 ロビンソンクルーソーはヤギを捕まえて牧場を作っていたし、宝島では ジム少年が、島に置き去りにされた海賊「ベン・ガン」が作ったヤギ皮の ボートで、海賊に乗っ取られたヒスパニオーラ号を奪還する。

 これらのヤギは、みんな人間が持ち込んだものだったのだ!

 ついでにここで、それぞれの島の位置をお知らせしよう。(一部推測)

 ロビンソンクルーソーが1659年に漂着した島は、トリニダード島の 南西、ベネズエラのオリノコ川河口から約140キロの位置にある。
 晴れた日には南米の海岸を望むことも出来た。
(当時、実際にこの島に漂流して6年間過ごした人をモデルにしている)  宝島は、海賊のフランチャイズであるカリブ海ではないらしい。
「らしい」というのは主人公のジム・ホーキンス(当時少年)が、この島 の位置をはっきりと明かしていないため、断片的に物語から推測するしか ない。

 船乗り相手の宿「ベンボー屋」の息子、ジム・ホーキンスは1760年 4月、イギリスのブリストル港を出航した。
 何日かかって島に着いたかは書いていない。ただ大西洋を航海したわけ だから、アメリカの東海岸を目指したと考えていいだろう。
 島の植生は、常緑のオーク、ヤナギ、セイヨウツツジがある。  また、松林を抜けた島の中央にある砦(ジムたちはこの砦にたてこもり、 海賊と戦うことになる)の地面が砂であることや、日中は暑いが、夕方に かけて冷たい風が吹くと書いてあるのも熱帯ではなく、アメリカ本土のジ ョージア州などとよく似ているのだそうだ。
 物語の最後に、スペイン語圏アメリカ領土の港に寄港している。(この 時、反乱の首謀者、ジョン・シルバーが行方をくらます。)
この場所はおそらく、当時スペイン領であったフロリダかキューバであると思われ、そ のことからも「宝島」はカリブ海よりかなり北寄りで、バミューダ諸島と ほぼ同緯度。アメリカ東海岸寄りと推測する。

 ついでに「十五少年漂流記」のチェアマン島は、(彼らがチェアマン学 校の生徒だったので、この名をつけた)南米のファンフェルナンデス諸島だ。
 だから彼らが捕まえて飼い慣らし、乗ろうとした鳥はダチョウではなく、 レアであったと思われる。

 

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