熊谷さとしのフィールドノート
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子分かれシリーズ第二弾!
アホウドリの巻

 前回はタヌキの子別れを紹介したが、今回はアホウドリの話だ。
 ちなみに「アホウドリ」という名前は、人間が近づいても逃げようとしないで、 カンタンに撲殺できたので「バカな鳥だなぁ」と言うので付けられた名前だ。
だから出来る限り本来の名前である「オキノタユウ(沖の太夫)」と呼ぶようにしよう。

 さてオキノタユウが生息している鳥島は、八丈島から漁船で16時間、 胃袋が逆さまになるほど吐き続けてやっと到着するという無人島だ。
ジョン万次郎が漂着した島でもある。

 俺が行ったのは、ヒナ鳥が飛び立つ時期だった。 オキノタユウというのは、ヒナ鳥に両親が代わる代わるエサを運ぶ。
アミの仲間であったり、イカであったり……
そしてある程度大きくなると両親はどこかに飛んでいってしまう。
広い太平洋だ。この親子が、今後出会う確率はほとんどないだろう。

 さて置き去りにされてしまったヒナ鳥は誰からもエサをもらえない。
このままなら飢え死にしてしまうだけだ。ヒナ鳥の生きる道はたった一つ。
自分で羽ばたき海に出て自分でエサを獲るしかない!
そのためにヒナは懸命に羽ばたきをする (そうして運動をすることで体の脂肪が落ち、スリムになって飛べる体にもなるのだ)。

 しかしオキノタユウは大きな鳥だから(両翼2メートル50p)羽ばたいただけでは飛べない (だから隣の鳥が撲殺されても逃げることが出来なかった。 バカだから逃げなかったのではない)。
 風に乗らなければ飛べない。しかもいつ吹くかわからない西風に乗らなければならないのだ (ギリシャ神話の中での西風ゼフィルスは、若者を未知の世界へと誘う神様なのだが、 これって偶然なのだろうか?)。

 ヒナ鳥を見ているとそれぞれに工夫が見られる。
高台や岩の上ににえっちらおっちら登り、飛び降りながら羽ばたくもの。
斜面を駆け下りながら羽ばたいてつまづくもの。
 また、羽ばたこうともせずに、隣のメスにチョッカイを出しディスプレイの練習ばかりするもの。
いつ吹くかわからない西風を待って、ともかくヒナ鳥たちは羽ばたく。
朝から延々と羽ばたき、疲れてしまって休んだ途端!西風が吹くこともある。
そんな時に限って、さっきまでディスプレイの練習ばかりしていた奴が先に飛んでいって しまうことだってあるのだ。

 「これって人生に似ている !」と俺はその時に思った。
どんな人にも必ずチャンスは訪れる。ただ、そのチャンス(西風)に気づいて うまく乗れるかどうかは、その人の日頃の努力(羽ばたき)にかかっているのだ。
今から準備すること、普段から努力さえしていれば必ずチャンスに乗れる!
その時は大きく翼を広げ、はるか太平洋6000キロの彼方…… ベーリング海まで飛んでいくがいい!ご卒業おめでとう!

(この話は、娘の学校のPTA会長をしていたときに卒業式の訓話として話したものだ)

 絶海の孤島 鳥島で、俺はこんな事を自然から教わった。

 

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