熊谷さとしのフィールドノート
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キツネたちへ

 ニホンオオカミが絶滅してしまった今、キツネは長いこと里山の生態系の頂点に君臨してきた。
人家の残飯を横目で見ながら、畑を荒らすウサギやネズミを捕まえていた。
時にはお稲荷さんに供えられている油揚げも食べていたろう。

 ところが、草原がなくなって真っ先にウサギの数が減ってしまったし、油揚げをお供えする人もいなくなってしまった・・・。
また、巣穴を掘るための東南向きの日当たりのいい斜面は植林されてしまい、枝打ちも間引きもされずほったらかしのままだから、下草が生い茂り日当たりが悪くなってしまった。

 その上更に、ペットから野生化したアライグマが里山に入り込んできてしまったのだ。
アライグマはキツネよりはるかにしたたかで、木登りはうまいし、水辺も平気、何でも食べるし気が荒い。
めちゃくちゃ頭が悪いから (相対的にネズミよりも頭が悪いという研究報告がある程だ)誰彼構わずケンカを売る。
家族で移動するから山の中で出会ったときに、アライグマの方が数が多いのだ。
賢いキツネは無用なケンカはしない・・・(「カンフーへの道」 というドラマで、少林寺の坊さんが 「賢い者は争うことはしない・・・だから誰も彼と争うことは出来ない」 と言ってたっけ・・・)

そうしているうちにいつのまにかキツネは、生態系の頂点の座が危うくなってしまった。

 本来キツネは、ニワトリを襲うときに、巣穴から遠い農家のニワトリを襲っていた。
巣穴近くのニワトリを襲ったら、自分の巣穴の周辺に罠を掛けられたり、毒餌を撒かれ、子どもたちに危険がおよぶことを知っていたからだ。
(シートン動物記 「銀ギツネドミノ」 より)

 現在キツネは、人間の信仰で残った古墳や歴史遺産の土塁跡、養鶏場近くに巣穴を作り、残飯や死んだニワトリも積極的に食べることにした。
そうしなければ生きていけなくなってしまったのだ。

 他の里山動物が、里山の変化に付いていけずに困っているときに、ライフスタイルを変えることができたのはキツネの賢さだろう。

 俺は、餌付け場に出てくるキツネを 「優秀なハンターとしてのプライドはどうした!?」 などとは思わない・・・やむにやまれぬ姿なのだ、どんな姿でもいい・・・キツネにはいてもらわなきゃ困るんだ!

 事足りる里山が回復するときまで、したたかに生きていてほしいと願う。

 

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